コラム

保険診療で採卵した胚のPGT-A検査について

保険診療で採卵した患者様でPGT-A検査をご希望される場合は、ほとんどのクリニックでPGT-A検査は先進医療と認められていない為、自費で治療を行っていただく現状となっています。これは保険と自費の混合診療が認められていないことが理由です。

しかし、PGT-A検査まで到達する患者様は、受精卵の遺伝子異常が原因である反復妊娠不成功または反復流産の可能性が高く、ここまでくるのに高額な医療費をお支払いただいております。また、PGT-A検査をしても移植できる正常胚が得られない場合に複数回の自費診療は患者様に大きな金銭的負担をおかけすると思っております。実際に当院に受診された患者様の中にも、他院でPGT-A検査を行い、移植できる胚が無く、再度高額な自費での体外受精をするのは費用的にも難しいと仰っている方もおり、さらに高額な費用負担が発生すると、お子様を諦めることになる場合があると痛感致しました。

現在当院におけるPGT-A検査後に移植できると判断された正常胚を移植しての妊娠率(GS確認)は72.7%あり、これは今まで異常胚の為妊娠できなかった方が、正常胚を移植すれば高確率で妊娠することを意味しています。保険で6回の胚移植の権利を使い切る前にPGT-A検査に移行した方が良いのではないかと考えるようにもなり、どうにかそういった方のお力になりたいと思い、慶愛クリニックでは来月より保険で採卵できる回数が残っている患者様で下記条件を満たしている場合のみ、PGT-A検査の費用は当院が負担し、無料とすることを決めました。しかしながら、経営を圧迫するものとなりますので、厳しくなった場合には治療方針を撤回する可能性もございます。

※条件※

①慶愛クリニックで1年以内に2回以上胚移植を行って妊娠が成立しない(反復不成功)、または2回以上の流産(反復流産)をされている方。  あくまでも慶愛クリニックで体外受精を行ってきた患者様への支援でございますので、当院で治療された方限定で行わせて頂きます。他院での治療歴は対象外となります。

②保険で採卵・移植ができる方

③保険で採卵した胚が残っていない方(厚生労働省より保険で採卵した胚を貯卵することは禁止されています)

④慶愛クリニックでの治療方針で行う方。(他院ではこうやっている・文献上こういう治療方法があるなど、慶愛クリニックの治療方針とは異なる場合は、ご希望される治療方針の施設で治療をお願い致します)

※注意※

・院長の許可が必要です。許可を得てから2ヶ月以内に採卵できる方を対象としております。

・PGT-SRは対象外となります。

先程記載させていただいた通り、PGT-A検査を行う場合は本来高額な自費での採卵費用・培養費用・胚移植費用・PGT-A検査費用となるところを、PGT-A検査費用を当院が身を切って負担することにより、混合診療とはならず、患者様は保険診療分のご負担のみで採卵→胚移植ができるようになります。

1992年にマウス単一受精卵からPCR法で遺伝子検査に成功して以来32年以上の月日が経ちました。前職加藤レディスクリニックで臨床遺伝専門医を取得して前身となるPGD、今のPGT-SRを数多く手がけてきましたが、慶愛クリニック開業後は多忙でこの領域にまで手が出せませんでした。ですが、この世界の元祖として再び貢献したいと考えています。

院長 竹原祐志